2023-11-10から1日間の記事一覧

映画評『フライトプラン』(2005)

だいたい、飛行機は平行な乗り物でなかなか高低差を作れなくてつまらないし、あの乗客席の並び方がどうもショットにしづらいと思う。ラストの非常用階段は良かった。 ジョディ・フォスターがセラピスト(メガネを外してキメ顔する芝居が印象的)からセラピーを…

映画評『貸間あり』(1959)

川島雄三といえば、覗いているようなあの視点から撮り続けた『しとやかな獣』が代表作であるとしきりに言われている。 確かに、かの作品の冒頭、伊藤雄之助と山岡久乃がちゃぶ台を片付ける様子から始まることからして、まさに川島的な映画である。だが、新藤…

映画評『ヨーロッパ横断特急』(1966)

陳腐な物語の実演をさらに皮肉がましく追体験する。この映画の監督を務めている男が脚本家として出演し、トラティニャンがほぼ本人そのものの役で空っぽの箱を持ち、行く先々に現れる娼婦に、悪党に、刑事に翻弄される。すべては組織が彼の力量を確かめる為…

映画評『踊子』(1957)

映画評『踊子』(1957) 色気、食い気に包まれた京マチ子に振り回される姉夫婦と田中春男演じる演出家の映画で、手前に物があって、基本的にカットバックやイマジナリーラインを乗り越えることは禁じられ、つねに覗くかのような視点から撮られてる。そうした傾…

映画評『不死身の保安官』(1958)

映画評『不死身の保安官』(1958) 「ジェーン・マンスフィールドときたらマリリン・モンローの物真似ばかりしてたんだ。まあ、幾分か西部劇のパロディじみた所があるね、『不死身の保安官』は」とウォルシュは言った。 マンスフィールドがスカートめくって露…

映画評 無造作な脚の誘惑『死の砂塵』(1951)ほか

映画評 無造作な脚の誘惑『死の砂塵』(1951) あれは確か『追跡』だったと思うが、主人公のミッチャムが少年時代に目の当たりにした拍車がついたウエスタンブーツの煌めきに囚われる映画だった。 『死の砂塵』もまたそうした脚についての作品であると言えるか…

映画評『ハイシエラ』(1941)

映画評『ハイシエラ』(1941) よれたスカートから細い脚を投げ出しながら、悪戯げに棒切れを弄んでいる女がいる。彼女はこちらに気がつくと、ふと愛くるしい瞳をむけてくる。 その如何にも悪女というような縦に筋が通った面立ちに負けないこってりとした唇は…

映画評『ベレジーナ』

映画評『ベレジーナ』(1999) 秘密結社コブラが、椅子で眠りこけるイェレーナ・パノーヴァの前に集う。意識を取り戻した彼女は顔をこちらへ向ける。切り返しで顔だけを向けて振り返るという『ヘカテ』のローレン・ハットンが初登場と結びのシークエンスで見せ…

エッセイ「TOKYO FILMeX 2018」

エッセイ「TOKYO FILMeX 2018」(感想は当時のもの) 2018年のフィルメックスにおいて、いくつかの作品を見たなかでそれぞれの作品に共通する主題があるように思えてならなかった。それは境界をこえることである。 『自由行』は中国大陸から香港に住まわざる…

映画評『パラサイティック/モーテルアカシア』(2019)

『パラサイティック/モーテルアカシア』(2019)は最も恐ろしい映画だった。 無論、筋立て自体は極々単純で、特別目新しい代物でもなく、H・P・ラブクラフトめいた神話生物によるホラー。 空からカメラが森を縫いながら、ある雪山にポツリとたつ建物がある。こ…

エッセイ「ボー・ピープに泣く。」

映画評『トイ・ストーリー4』 最初は肩舐めの切り返しでここで帽子を深く被せてやる。この時に、見た目ショット同士の切り返しで分断するのではなく、同一のフレームに納めることによって、再開の予感をさせる。ここのあたりのカッティングが本当に古典的で…