2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

映画評『ベルリン 天使の詩』(1987)

・天国より遠いところ 灰色にくすんだベルリンの街が眼下に広がっている。その様子をじっと見守っている天使ダミエルは、家の一軒一軒から地下鉄へ、時には飛行機にまで飛び回り、病める人々の心を安らげるため、そっと肩に手をあてる。心が純粋なものにはな…

映画評『ハドソン川の奇跡』(2016)

「私ではない。あらゆる人々が成し遂げ、生き延びることができたんです」ーー『ハドソン川の奇跡』 絶対的な個人の活躍を疑い、個々が何らかの部品として機能する。飛行機が川に不時着しようと、取り乱すことなく、冷静に職務をまっとうするのが要であり、ア…

映画評『木と市長と文化会館』(1993)

『木と市長と文化会館』は実にたあいない素振りを見せる。 フランスの片田舎に、若い市長が古樹を倒し、村興しのためにメディアテークを築こうと試みている。それに反対する小学校の教師、政治雑誌の編集者がそれぞれ、ほどほどに関わる。 こうした筋書きの…