映画評『女は男の未来だ』(2003)

 通しで見たが何が優れていてどこが面白いのかさっぱりわからない。恋人がレイプされたことを告白すると手を震わせながらコップを口に運ぶ芝居からし心理的で紋切り型と言わざるをえない。日常的な風景という書き割りを模した様式的なほんとうらしい演技がひしめき、大学教授と酒を囲む場面に顕著だが、ため息をついたり、下を向いてうつむいたりという身振りがすべて空々しい。いまよりは撮影はマシだからといって褒めてもしょうがない。大体、ホン・サンスが用いるパン、ズームといった演出は撮影の効果にすぎない程度の低い安易な技術で間違っても画面ののっぺりとした平面性から逃れてはおらず、空港の場面でピントのぼやけたところの奥に人物を配そうとオフのフレームが弱いのには代わりがない。それなりに見応えがあるのがセックスの撮り方で日本のポルノやピンクみたいに心底気持ち悪いやり方ではなく、なんともあっけらからんと撮っているのには好感がもてるがまあそんなもの人の好き好きだろう。
 これがエリック・ロメールだとか、小津安二郎だとかに匹敵するクオリティにあると思うのであれば音を消してその身振りがどれだけ違うのかを検証してみてから述べて欲しいものだ。