2023-11-09から1日間の記事一覧

映画評「ママと娼婦」

映画評「ママと娼婦」 フランソワーズ・ルブランは初めはセリフがなく、ドゥマゴにいる姿が映され、レオーと共に雑踏を消えていく。その後、レオーは友人役の男に彼女のどういう見た目だったかをことこまかに話し、どんな身の上なのか推測する。そして、デー…

論説「映画痴人 蓮實重彦」

論説「映画痴人 蓮實重彦」 A 表層批評の紋切り型 蓮實重彦の表層批評はコンテクストがあってこそできる放言にすぎない。文芸批評における『夏目漱石論』(講談社文芸文庫、二〇一二年)ならば作家の伝記的事実に基づいた解釈を否定し例えばあえて「横臥」…

映画評『熱波』(2012)

映画評『熱波』(2012) 『熱波』第一部冒頭、撮り方がスタンダードのフレーミングが弱く、横移動のショットが虚しい。切り返しにおいては最悪で、幽霊の女のアメリカンショットも絵としては死んでいるし、クロースアップに至っては圧延され横に潰れた顔には…

映画評『浮草』(1959)

映画評『浮草』(1959) まず、冒頭、灯台に平置されたかのように忽然と置かれたガラス瓶、二艘の漁船、村の家々が映し出される。それらのショットの後景に共通しているのは真っ平らな海と空とが真正面から撮られていることである。小津が醜悪な『万引き家族…