映画評「ママと娼婦」

映画評「ママと娼婦」

 フランソワーズ・ルブランは初めはセリフがなく、ドゥマゴにいる姿が映され、レオーと共に雑踏を消えていく。その後、レオーは友人役の男に彼女のどういう見た目だったかをことこまかに話し、どんな身の上なのか推測する。そして、デートの約束をするためにレオーが電話するとそのやり取りが映るが、ルブランの声が受話器から聞こえるのみで、その姿はスクリーンには映らない。

 つまり、この映画は観客に見事に、ヴェロニカを演じるルブランを、ミステリアスに見せる演出を施しているのである。まず、映像で観客に見せる、そして登場人物にそのヴェロニカを話題に挙げさせ観客を物語に引きこみ、そしてあのなんともいじらしいルブランの声だけを聞かせてから、ようやく二人が対面で話す場面を設定しているので、非常にサスペンスフルに映るのである。