映画評『ザ・スーサイドスクワッド』(2021)

映画評『ザ・スーサイドスクワッド』(2021)

 意識的なキャンプかつトラッシュフィルムとしては至極楽しんだが2度は見ようと思わない。脚本の詰めが説明的で甘く、たとえばB級部隊が皆殺しになった後に出てきたA級部隊がグループアップする回想を入れる必要はない。それぞれのキャラクターの能力を活用する見せ場が設けられてるのだからわざわざその前に解説を挟む必要がなく、見ながら「ああ、こういう性格でこういう能力なのね」と思わせればそれでよいはずだ。これはB級ではなくA級の物語を楽しむ映画である。セリフで帳尻を合わせようとするので勢いが削がれている。ネズミ女が「監視カメラは任せて!」と叫ぶと、監視カメラのコードを小動物が噛み切って、そのままモニタールームのブラウン管が砂嵐になるという具合に無駄な説明のショットを積み重ねている。これが本当にB級のプログラムなら作戦開始とともにネズミが監視カメラを齧っているショットで済ますのがスマートなやり方だろう。それで満足しないなら、画面の奥から悪役軍団を乗せたバスが通る様子をクレーンで降りながら撮っていると、手前に舐めたコードがちぎれた監視カメラの横をネズミが通り過ぎていくみたいな風に描くのもいささか説明的だろうがサービスにはちょうどいいだろう。なんにせよ、『クワイエットプレイス2』の荒唐無稽さとは似ても似つかない漫画的=言語的な作品である。近年の映画は誰に向けても作られていないサービス精神を度外視した退屈な代物ばかりななか、一応はある一定の観客に向けて撮っている分まだ楽しめる部類にはいる。いい加減この程度の題材を110分に納めてはくれぬものか。